Column コラム
子どものお年玉問題どうしていますか?~パッブリック・リレーションズ(PR)の視点で子どものお金の使い方を考える
2022.01.04
皆さん、新しい年をどのようにお迎えでしょうか?毎年、この時期になるとお年玉について様々な相談を受けます。お年玉は子どもたちにとって非日常的な金額が手に入るので、扱いがとても難しいと思います。だからこそ、お金について、子どもたちと対話をするいい機会でもあります。今回は、お年玉だけでなく、子どもたちとお金について対話していく方法をパブリック・リレーションズ(以下PR)の視点でお話ししていきます。
まず、子どもたちと合意しなければならないのが、学校は学ぶための場所であり、人は学び続けなければならないということです。学ぶ目的はシンプルに2つ。1つは自分が幸せになるため。もう一つが幸せな社会を作るため。学びもお金も手段ですから共通の目的は実は同じです。しかし、子どもたちはお金を自分の好きなものを買うために使いたいと思います。そこから、「社会の幸せ」、つまり「誰かを幸せにするためにもお金は使える」といった選択肢を増やしていくことが大切です。
お金の使い方の選択肢をわかりやすく子どもたちに伝えるために開発された教材があります。米国Money Savvy Generation社のCEO、Susan Beacham (スーザン・ビーチャム)により開発された豚の貯金箱です。従来の貯金箱と違うのは、4つの「穴」としっかり立つ「足」があることです。 四つある穴には① Save (貯蓄・ためる) ②Spend (消費・つかう)③Donate (寄付・ゆずる) ④Invest (投資・ふやす)というように目的で分けられていて、それぞれの用途に使えられるように、お金がそれぞれの足から出てくるような仕組みになっています。
この貯金箱を使ってもいいのですが、もう少し「自律的な学び」の観点も入れ、僕は以下のような方法を考えました。まず、1枚の白紙を用意します。4つ折りにして中央に手元にある金額の総額を書きます。それぞれのマスには、①自分の幸せのため②自分の成長のため③未来の自分のため④誰かの幸せのためと書きます。
①自分の幸せのため:自分が今欲しいものとその理由を書きます。優先順位をつけ、自分が欲しいものをしっかり親にプレゼンをして、親が納得して買うという対話を大事にしましょう。
②自分の成長のため:ここは自分に投資するという考えを伝えましょう。自分を成長させるための書籍や資格などに使います。英検や漢検などもここから出してもいいでしょう。
③未来の自分のため:主に貯金を意味します。貯金をすることは未来の自分へお金を送るという意味です。今欲しいものを我慢して、さらに大きな金額のものを購入することもできます。未来のためにお金を使うことを我慢することも経験することは重要です。
④誰かの幸せのため:主に寄付や投資を意味します。
寄付は困っている人のためにお金を使うことを意味します。PRで言う倫理観、つまり「みんながハッピーであること」が土台になったお金の使い方です。この概念は具体的な例を挙げて対話するといいでしょう。最近では、12月16日、台風22号がフィリピンに大きな被害をもたらしました。ユニセフなどのホームページなど見ながら想像力を膨らませながら対話をしましょう。自分達も、いつ天災に見舞われるかわかりません。想像することで、少しのお金が誰かを笑顔にし、役に立つ感覚が身に付きます。
投資は、大人の世界ではインベスターリレーションズ(IR)になります。子どもたちに伝えるときは、「お金を必要とする会社や個人に活用してもらうことで、社会を幸せにする仕組み」と伝えましょう。中高生にはクラウドファンディングがわかりやすいと思います。クラウドファンディングのサイトを見ながら具体的に対話するといいでしょう。支える側を経験すると、支えられる側、つまりクラウドファンディングで資金を集めるという手段への敷居が低くなります。最近では、中高生がクラウドファンディングで資金を集める事例も生まれてきていますが、もっと広がって欲しいです。
このように、1枚の紙を使ってお金を使う目的と手段をわかりやすく対話をしていきます。繰り返すことで、目的と手段を意識し、自律的にお金を使えるようになります。このように、目的を合意し、目的を達成するためのより良い手段を対等なコミュニケーションを通し、自分の考えを修正しながら決定していくのがPRです。お金については、ご家庭によって価値観が異なっていますので、この方法が合わない場合もあると思いますが、一つの方法として参考にしていただければと思います。
今年も、PRを教育に取り入れるお手伝いができましたら幸いです。今日お話しした対話の方法について具体的に深めたい場合はPR for Schoolをご活用ください。