Column コラム

100%利他 × 高校生

2021.06.19

関東も梅雨に入りました。畑と田んぼに関わるようになってから、梅雨入りすると安心する自分がいます。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

今回は100%利他の経験と高校生だからこそできた医療行為の可能性について、ご紹介します。

本校では、社会と学校を接続する教育活動の1つで、オンラインを活用したライブ授業を実施しています。この活動の目的は、様々な職種の大人との対話を通じて、生徒1人ひとりの学びの目的を明確化していくことです。展開としては、生徒たちで取材してみたい人や分野の希望を出し合います。クラスの仲間の挑戦はみんなで応援したり、一緒に参加してみるというグランドルールの合意のもと、生徒たちと先生たちでアポを取りながら、アポが取れたら基本的にはみんなでお話を聞きます。アポの時間は平均して30分。オンラインによってできるようになった新しい教育手法の1つです。1学期はすでに5人の大人がお話をしてくれているのですが、その中でも地方医療に尽力するお医者さんのお話を今回は共有させていただきます。

医師であるE先生は、高校時代、漠然とですが「世界平和」を目標に掲げ、手段として医者になる道を選んだそうです。2度の浪人を経て医学部に合格し、研修医をしている年に東北大震災があり、現場に急行したことで、地方医療の必要性や医師不足に直面。都心では医者も看護師も自然と集まるが、世界平和を目指すためには、人が集まっていない地域で医療をすることで、今空いているピースを埋めていくことに気づき、現在につながる地方医療の道に進んだと自己紹介から始まりました。ここまでで10分程度。すでに一緒にお話を聞いていた高校生も、先生たちもE先生の生き方に魅了されていましたが、さらに素敵な時間に入っていきます。

E先生の病院では、積極的に高校生のインターンを受け入れているというのです。その理由は、「高校時代に100%利他の経験をしてから、残りの長い人生を設計して欲しい」という強い想いから始めてきたそうですが、受け入れてきた高校生の活動によって、医者ではなく学生だからこそできた医療行為がたくさんあり、若者が大人を救い、結果的には地域を救うという現場を何度も見てきて、今は積極的にインターンを受け入れているというのです。約1週間のインターンの間、高校生は1人の入院患者さんを担当します。高校生ですから、できることは主には患者さんとの「対話」。しかし、この「対話」がとても大切で、高校生だからこそ医者や看護師でも聞き出せない患者さんの想いを引き出していくのだそうです。

例えば、病院食を全然食べてくれない患者さんから、魚釣りが好きだったことを聞き出した高校生は、次の日は釣りに出かけ、お魚をつってきて患者さんにプレゼント。すると驚くほど食事をしてくれるようになった話や、演奏会に参加したいという声を聞き出せた生徒は、自分の高校の仲間に相談して、吹奏楽部に頼んで院内での演奏会を実施。これがきっかけで手術を受ける決心をした患者さんがいるなど、事例はいくつも続きました。患者さんの想いを聞き出し、自分にできることで患者さんを笑顔にすることを必死に考えた結果、医者にも看護師にもできない医療行為や、教科書に書いていない活動によって誰かを笑顔にできる行動がこんなにもあることを学び、本校の生徒たち(先生たちも)の目の色が変わっていきました。

100%利他の経験と、誰かの笑顔のために今の自分にできることを必死に考えることで、誰かを笑顔にできるというお話でした。そして生徒の1人から「東京の僕たちも先生の病院にインターンをすることはできますか?」という質問に「もちろんです」と即答。選択制の修学旅行(スタディツアー)を実施する本校としては、新しい行き先が1つ決まった瞬間でもありました。

生徒の可能性を信じること。信じて任せること。そして利他の経験をする重要性を学びました。PR for Schoolでも大切にしている「みんなをハッピーにする」「双方向性のコミュニケーション」にもつながるお話ですね。