Column コラム

生徒が「選べる余地」

2020.12.17

こんにちは、山藤旅聞です。
みなさん、お変わりございませんか?
寒さも本格化してきて、いよいよ師走の時期となってきましたね。
みなさんの学校の様子はいかがでしょうか?

行事でも、各教科の授業でも、教員からいくつもの教育を生徒たちに
提供して (与えて) いると思いますが、
最終的に「生徒が選ぶ余地」があるかどうかが、
生徒の主体性に大きな影響を与えると思います。
具体的には、私が担当しているクラスで起きたことを事例に
みなさんと考えていきたいと思います。

総合的探究の時間(本校ではクロスカリキュラムと呼んでいます)に、
生徒の1人が農業や、食品ロス、一次産業の未来に関心があり、
学校の近くに規格外野菜を取り扱うレストランを見つけ出し、
取材をしてみたいと提案してきてくれました。
放課後に有志で活動するのではなく、授業中に活動を実現させるために、
みなさんなら、他の生徒にどのような声をかけますか?

全員一緒に取材にいくのも1つの方法ですね。
関心がない生徒でも、もしかすると取材現場を経験することで
次のアクションにつながる可能性があるからです。

私は、同僚の先生たちとも相談した結果、以下のような声かけをしました。

・この取材に興味がある人は一緒に行きませんか?
・この分野に興味がなくても、仲間の活動に同行してみませんか?
・教室に残って、他の行動を他に探してみませんか?
・今回は、何もしなくても構いません。ただ、仲間たちの活動を邪魔はしないでください。

つまり、生徒に取材に行くか、行かないかの選択をしてもらいました。
そして取材に行かない場合は、自分で責任を持って、自分の行動を模索する提案もしました。
さらには、自己責任で、他人に迷惑をかけないことを約束に、
活動をしないことも選択肢として提案してみました。

結果、今回の活動では、取材に数名が同行し、多くの生徒は教室に残りました。
しかし、30分ほど、現地からオンラインでライブ授業をすることで
全ての生徒と合意形成することができました。

このように、取材の当日は、
現地で取材をしている生徒と、クラスでライブ授業を受ける生徒に別れましたが、
結果的には、現地で取材をしている生徒はもちろん、クラスに残った生徒たちも、
必死にメモをとって学んでいました。
翌日、同じクラスで授業があり、クラス全員に感想を聞くと、
どの生徒も前向きに取材の授業を受け入れていたり、
取材した生徒たちに、現場でしかできなかったであろう学びについて、
質問する生徒も出てきました。

それぞれの生徒たちが、自分で選んだからこそ、現地での取材も、学校に残った生徒も、
それぞれ学びの主体性が高まっていて、双方に質の高い教育が実現したのだと思います。

先生が良かれと思って全員にやらせるのではなく、提案して、
生徒が「選択する余地」を残す教育は、パブリック・リレーションズの考え方の
「双方向性コミュニケーション」「自己修正」に関わってくるとも思います。

生徒が「選ぶ」だけで、学びの質が大きく変化することを実感した出来事でした。