Column コラム

Public Relations for School 公認ファシリテーターの実践紹介

イベント企画から学ぶ誰ひとり取り残さない学校行事・ホームルーム運営のヒント

2025.02.23

パブリックリレーションズ for school 公認ファシリテーターの大槻 侑杜(聖和学園高等学校)です。今回はパブリック・リレーションズ(以下PR)の視点から学校行事・ホームルーム運営を生徒主体にしていく実践を紹介します。

PRとは「倫理観」「双方向性コミュニケーション」「自己修正」という3つの要素をベースとした「マルチステークホルダー・リレーションシップマネジメント」です。私はPR認定講座修了後,「物事に関わるステークホルダー(登場人物)を整理し,みんながOKの目標に向けて,誰も取り残さないように軌道修正をしながら対話をする」と理解しました。

【PRを取り入れたイベント企画・運営】

2024年12月27日「サウナ×教育」をテーマにしたイベントを宮城県で開催しました。このイベントの目標は参加者が教育に関するモヤモヤを晴らすきっかけを得ることでした。サウナ体験や話題提供,対話を通じて目標に向かいました。先述したPRの4つの考え方を取り入れて企画および運営を行いました。

(1)ステークホルダー

「教育に関するモヤモヤ」という普遍的なテーマを設定し,学校の先生だけではなく,民間企業の人材教育,子育て中の保護者など裾野を広げて教育に関心を持つ様々な立場の参加者を想定しました。その結果,話題提供内容や各セッションの問いに偏りがないかを検証することができました。当日は幅広い視点が対話に反映される場を創ることを心がけました。

(2)倫理観

「誰ひとり取り残さない」という考えのもとサウナに入らない参加者でも楽しめるプログラムを用意しました。対話や食事,講師との交流といった選択肢を提供し,参加者が自分に合った形を選択できるようにしました。目標には向かいながら多様なニーズに応えることを目指しました。

(3)双方向性コミュニケーション

コミュニケーションの場づくりを工夫しました。自分の呼吸に集中して「調う」こと,自分の考えを伝える安心安全な環境,対等な対話環境を意識しました。例えば参加者全員を「~さん」と呼ぶことや「聴くこと」をルールにすることで,安心して意見や考えを出しやすい環境が生まれ深い対話へとつながっていきました。

(4)自己修正

企画段階で自己修正の機会を何度も取り入れました。手段が目的化しそうになる,ステークホルダーへの配慮が不十分になる,広報が行き届かない等の課題に直面しました。その都度PRの視点に立ち返り運営メンバーのフィードバックを取り入れて修正を重ねました。

【学校行事の企画やホームルームでの応用可能性】

これらの学びは学校行事やホームルーム運営においても活用できると感じています。具体例として体育祭や文化祭などについてクラスで話し合う状況を想定します。
 まず初めに「誰ひとり取り残さない」という考えを全体で合意し,その行事に関わる生徒,先生,保護者,地域住民,企業など多様な立場の人々を「登場人物(ステークホルダー)」として整理することが重要だと思います。その上で「目標は何か」「誰ひとり取り残さないようにするには?」という視点に何度も立ち返り,対話を重ねることで行事がより多くの人にとって価値あるものになるのではないでしょうか。

対等な対話について考えてみます。クラスでの話し合いにおいて,先生や学級委員などいわゆるリーダー的な立場の人が進行することが往々にしてあり,私も以前は同様に実施していました。確かに決め事が早く決まりやすいというメリットもありました。しかし生徒の中には意見があるけど言えなかった,もう少し説明があると良かった,何の話をしていたのかわからなかったなど様々な状況があったことを知り,それ以降は双方向性コミュニケーションを意識するようになりました。そのスキルとして場を創る力やファシリテーションも必要だと考えています。

最後に自己修正を可能にする環境について触れたいと思います。完璧な成果を計画段階で目指すのではなく,まずは行動しその後改善することも大切なのではないでしょうか。自己修正はやってみないことには実現しません。クラス全体でチャレンジを歓迎する雰囲気を醸成し自己修正の機会を増やしたいです。ここで提案したいのは「3割共有」です。例えば生徒が話し合ったり決まったことの3割を目安に先生に報告したりクラスに共有をすることで,進捗状況や方向性を明確にすることができます。これにより双方の期待値や認識のズレを最小限に抑えられます。またこの時点での先生からのフィードバックにより生徒が自己修正を行うきっかけにもつながるでしょう。

PRの考え方を取り入れたイベント企画・運営は学校行事やホームルーム運営につながる内容でもあったと考えています。PRの考え方を自分の言葉にして相手に伝え,実践を重ねることによって学校に落とし込むことが今後の課題であり浸透していく鍵だと考えています。お読みいただきまして誠にありがとうございました。行事企画やホームルーム運営の参考になれば幸いです。