Column コラム

教師・上司のためのコミュニケーション論⑦ ~プレゼンのコツ その2「プレゼンターの魅せ方」~

2021.11.29

教師と生徒にまつわるコミュニケーションについてシリーズでお話しています。

上司と部下の関係に読み替えても使える部分が大いにあると思いますので、教師以外の方もぜひお読みになってください。

前回のコラムでは、プレゼンがうまく伝わる話し方のコツについてお話をいたしましたが、米国の心理学者A・メラビアンの研究によるとプレゼンで重視される割合は以下の通りです。

 ①言語情報:メッセージの内容・・・7%

 ②聴覚情報:声のトーンや口調・・・38%

 ③視覚情報:ボディーランゲージや見た目・・・55%

(参考:井之上喬『パブリックリレーションズ 第二版』(2015)日本評論社)

つまり、プレゼンで最も重視されるものは「視覚情報」なのです。

誤解してほしくないのですが、重要重視は異なります

プレゼンにおいて重要なのはあくまでも「①メッセージの内容」であることは言うまでもありません。この点についてはすでに私のコラムでも触れております

パブリック・リレーションズでは、対等な関係でのコミュニケーションを柱の1つとしていますので、見る側が「③ボディーランゲージや見た目」を重視する、という客観的な事実も見逃してはいけません。

ここで皆さんと1つ共有しておきたい大切なことがあります。

「プレゼンする=かっこいいスライドを作らなきゃ!」ではありません。

プレゼンの主人公は絶対的に「プレゼンター」です。

スライドはあくまでも主人公であるあなたを際立たせる「背景」のようなものです。

プレゼンにおいては、主人公はプレゼンター、スライドは背景ということを肝に銘じてください。

というわけで、今日は「“プレゼンター”の魅せ方」についてお話ししようと思います。

①聴衆の表情を見ながら話そう

教育実習で私が初めて教壇に立った日の放課後。指導担当の先生から以下のようなアドバイスをいただきました。

「先生が喋ってる言葉に対して、相手(生徒たち)がどんな顔で聞いているのか、よく観察しないとダメだよ。」

それ以来、授業で喋る際は、生徒たちの表情を味わいながら喋るようにしています。

すると、自然と話し方はゆっくりになり、間を開けたりできるようになります。

(話し方については前回のコラムをご参照ください)

このとき、言葉を介さなずとも相手の表情から「フィード・バック」を受け取ることにより、双方向性コミュニケーションが成立することになります。

スクリーンを見ない

プレゼンの場合、投影されたスクリーンを見ながらプレゼンすると、聴衆を見ることができません。でも、「話す内容を覚えていないので、どうしても何かを読みたい」という方もいると思います。

そのために、私の場合は、客席最前列に、自分向きにPCを置いておきます。ここにスライドが映し出されていれば、スクリーンを確認する必要はありません。スライドはプレゼンターの背景です。スライドは「何を話すのか」を思い出すトリガーになれば十分です。

なお、何を話すのか思い出せないのなら、それは単に練習が足りていません。

聴衆の表情を見ながら話すことで双方向性コミュニケーションの環境を実現し、「自分に話しかけてくれている」という印象を与えることができるのです。

②すべては「演出」

ジェスチャーや歩きは必要?

ネットでプレゼンのコツを紹介するサイトなどを見ると、ジェスチャーを入れろ、とか、プレゼン中に歩く、など書いてありますが、なぜそんなことする必要があるのでしょうか?

たしかにカッコいいプレゼンになるかもしれませんが、私が皆さんに考えてもらいたいのは、「全ては言いたいことを訴えるための最適な演出になっているか?」です。

演出

つまり、考えた結果、敢えてそうやっているのならいいと思います。

ジェスチャーや、歩くプレゼンも、スティーブ・ジョブズ風で一見かっこいいのですが、落ち着きがない印象を与えるプレゼンになっている恐れもあります。ではどうすればいいのでしょうか。

自分自身の姿を録画してみよう

でもちょっと恥ずかしいですよね。それなら、30秒でも1分でいいです。一度録画してみてください。

自分の話している姿を聴衆目線で見たら、理想の自分といかにかけ離れているかが分かります。

プレゼン中の姿勢というのは人それぞれ癖みたいなものがあります。

私の場合、顎や口元を触る癖や、体が左に傾く(休めの姿勢)癖があることがわかりました。それが分かっただけでも、「次から直そう」という意識を手に入れることができます。

棒立ちになっている人、左右に揺れている人、猫背の人・・・。

「演出」なのか「癖」なのか。録画した上で判断してください。

なお、話し方同様、大抵の人に言えるのは、ジェスチャーや動きもゆっくり・ゆったり、を意識すると、いい印象を与えるプレゼンになると思います。

③身だしみ

「この人の言っていることは胡散臭い」と思われるような、聴衆が気になるような身だしなみは、演出でなければ回避した方がいいでしょう。迷ったら、最上位目標に立ち返って考え直すのもパブリック・リレーションズ的な考え方です。あなたの好みやポリシーにこだわることよりも、プレゼン内容がちゃんと伝わることが最上位目標のはず、とわかれば、「最適な身だしなみは何だ?」と考えることができます。

なお、最近はノーネクタイのビジネスマンが増えてきていますが、相手の社風・文化に合わせた身だしなみを考えて、演出してください。私の場合は、担当者にズバリ聞いちゃうことが多いです。すると、「うちの部長はそういうところ結構うるさいから、スーツにネクタイの方が無難ですよ」や、「少しラフの方が気楽に打ち解けられると思いますよ」などと教えてくれる場合もあります。

つまり、相手の立場や環境を考えた倫理観がベースの『自己修正』を実行しているわけです。

植松電機の植松努さんのTED動画は瞬く間に拡散された、伝説のプレゼンの1つといえるでしょう。このときの植松さんは作業着を着ています。このように、身だしなみも演出の1つだととらえ、「その身だしなみは、自分のプレゼンに最適な演出か?」と自問自答してみてください。

次回は、「スライドの魅せ方」ついてご紹介いたします。

みなさん、こんなスライド作っていませんか??