Column コラム

教師・上司のためのコミュニケーション論⑥ ~プレゼンのコツ その1「話し方」~

2021.09.30

教師と生徒にまつわるコミュニケーションについてシリーズでお話しています。

上司と部下の関係に読み替えても使える部分が大いにあると思いますので、教師以外の方もぜひお読みになってください。

前回のコラムでは、プレゼンテーションもコミュニケーションですよ!というお話をいたしました。その中で「プレゼンがうまく見えるコツは、先に教えない方ががいいですよ」というお話しをしましたが、内容がどんだけ立派であっても、聴衆が見聞きする気にならないようなプレゼンではもったいなさ過ぎます。

そこで、今回からプレゼンがうまく伝わるコツについてお話ししていこうと思います。これをマスターすれば、プレゼンの自信がつくと思います。今日は「その1 話し方」です。

日本語というのは、英語に比べて単調になりがちな言語です。そういう言語なので仕方がないのですが、逆にそこを乗り越えて次の①〜③のコツをおさえれば、相手の心を動かし、行動まで変えられるプレゼンテーションになることでしょう。

①声のスピードをコントロールする

「もっとゆっくり話した方がいい」というアドバイスを受けたことがある人は多くありませんか?なぜでしょうか?早口だと聴衆の感情が追いつかず、主体的になれないからです。プレゼンは、プレゼンターの自己満足のためにやるものではありません、聴衆の、心のみならず行動まで変えるためのものです。ですので、聴衆の感情を動かすために、喋るスピードを使い分けることが重要です。また、プレゼン中に数秒、無言の「間(ま)」を入れるとさらに効果的です。例えば、

(ゆっくり)1945年。(間)人類史上、最悪の悲劇となった第二次世界大戦は終わりました。しかし、(すこし早口)平和が来ると思ったのも束の間、(間)(ゆっくり)世界は再び、緊張状態となったのです。(長めの間)冷戦の始まりです。」

この「間」に「え〜っと」など、いわゆるfiller wordを入れてしまう人がいます。絶対にやめましょう。意図的な無言の「間」をつくることで、「ん?なんだ?」という聞き手自身の自発的な思考を誘発させる狙いがあります。つまり、この間によって聞き手は主体的になることができるのです。

②声のボリュームをコントロールする

10数年、プレゼンの指導をしてきましたが、声が大き過ぎた人はほとんどいません。ほとんどの人は声が小さいです。ただし、大きければ良いと言うわけではありません。これも①同様、パートで使い分けることが大切です。例えば

(小さな声で)こちらの新商品。お値段なんと、(大きな声で)3980円です!」

となるわけですが、実はこの大小を逆にしても面白い現象が起きるんです。

(大きな声で)こちらの新商品!お値段なんと!(小さな声で)3980円です」

わかりましたか?こっちも逆にアリですよね??

要は、大小の「落差」があれば、プレゼンを聞いている人の注目や関心を集めることができるのです。

③声の高低をコントロールする

実は、今日の①〜③ですが、私が「日本一上手に声を使いこなしてプレゼンしている人」を想像しながら書いています。誰だかわかりますか?

ジャパネットたかたの高田明さんです。彼の口調を思い出しながら次のセリフを読んでください。

「さあ皆さん、期間限定、しかも50個限りですよ。今しかございません。お早めにお電話をお願いいたします。」

読む人によって違うポイントで①声のスピード②声のボリュームを使い分けたと思いますが、高田さんの③声の高低も想像しませんでしたか?しましたよね??まさにそれです(笑)

高田さんは声の高低を(おそらく)意図的に使い分け、相手に伝わる印象をコントロールしています。高い声は元気の良さ・ワクワク感といった印象を与えます。一方で、低い声は慎重・厳格・丁寧といった印象を与えます。このセリフを全て高い声で話してしまうと、どうもお調子者が「さあさあ今買わなきゃ損だよ!」とまくし立てているように聞こえてしまいます。そうならないようにするためには、高低さを意図的に使い分ける必要があるのです。

(ちなみに高田さんの地声は意外と低いみたいですよ)

さあ、ここまで読んでいただいた皆さん。

プレゼンテーションは双方向性コミュニケーションです。心を動かし、行動まで変えるためにあるものです。

ただスライドをめくりながら台本を読むのではなく、①声のスピード②声のボリューム③声の高低さを意識して、練習してみてください。

米国の心理学者A・メラビアンは、「好意や反感などの感情を伝えるコミュニケーション」という特定の状況下において言語情報、聴覚情報、視覚情報が矛盾した際、相手が重視するのはどれか、という実験を行なった結果は以下の通りでした。

 言語情報:メッセージの内容・・・7%

 聴覚情報:声のトーンや口調・・・38%

 視覚情報:ボディーランゲージや見た目・・・55%

(参考:井之上喬『パブリックリレーションズ 第二版』(2015)日本評論社)

前回のコラムでは①の大切さを説明しました。今回は②でした。次回はプレゼンテーションにおける③「視覚情報」についてご紹介いたします。