Column コラム
遅刻した生徒をPR的に指導してみる
2020.11.16
すっかり寒くなってきたのに、まだ夏用のズボンで我慢をしている
木野です。今度の休みは衣替えをします。
さて、少しずつパブリック・リレーションズ(PR)の考え方が
広まってきたようで、ご質問をいただくことも増えてきました。
※皆様も是非Facebookのコメント欄にお気軽にご質問をお寄せください!
さて、今回はDMでいただいた質問にお答えします。
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「遅刻した生徒の指導にあたる際はどうすれば良いですか?」(30代)
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私の実践例をご紹介いたします。
PR第一の柱は「倫理観」です。
これを私なりに実践するときに念頭に置くのが「みんながハッピーになる」かどうか、です。
ですので、指導にあたる際、回避モチベーションを用いないように心がけています。
回避モチベーションというのは、
「不幸な未来を回避したい」という動機付けのことです。
私が以前勤めていた学校では、「10回遅刻をしたら親を呼び出します」という
生活指導ルールがありました。
自分の失態が親にバレるのですら、生徒にとっては苦痛なのに、
その上「親を呼び出す」というさらなる苦痛が待ち受けている、という…。
これが回避モチベーションを使った指導は、正に「脅し」になるケースもしばしばです。
ですので、回避モチベーションは、強力な効果を発揮します。
なんとしてでもこんな不幸な未来は回避したい!という動機が働くからです。
しかし回避モチベーションは、心理的には消極的な動機付けになるため、積極的に取り組む動機にはならず、長続きしません。
この例で言えば、「お腹が痛くて」「体育着を忘れて」と嘘をついてその場をしのごうとして、
結局遅刻ギリギリに登校するようになります。
(もちろんこれが本当の理由の場合もあります!)
最悪、駆け込み乗車をする、信号無視をする、などの危険な行動に至ることも想像できます。
以上のことから、指導において、回避モチベーションを多用しないことを私はお勧めしています。
私の場合、生徒が遅刻したら、「おはよー。大丈夫だった?」と聞きます。
このとき、生徒が「大丈夫です」と言ったら、遅刻の件は以上終了です。
大丈夫なら本人に任せましょう。
大丈夫じゃない場合、例えば、怪我をしてしまった、
何かしらのアクシデントに巻き込まれた等があれば、状況確認をします。
また「親と喧嘩しちゃって」なんていうのもよく聞く理由です。
このとき、生徒と対等な「双方向性コミュニケーション」(PR第二の柱)
になるよう気をつけます。
学校のルールや先生の思いを一方的に生徒に伝えるのは
対等なコミュニケーションではありません。
生徒は自分の行動を言語化することにより、遅刻の前後関係を分析し、
「自己修正」(PR第三の柱)のフェーズに入ることができます。
ただし、遅刻癖がついてきたら、私から理由を聞き始めます。
「倫理観」(PR第一の柱)が身についていない、またはズレてしまった可能性があるからです。
このとき、「嘘は言わなくていい。どんな理由でも絶対に怒らないから。そのかわり、本当のことを言ってね。」と前振りをした上で、
「今日はどうしたの?」と聞きます。
先生に遅刻について咎められる、と察した生徒が咄嗟に嘘をついてその場をしのぐ、
ということは少なからずあるでしょう。
これは性質的なものではなく、「嘘をついてバレなかったので、怒られずに済んだ」
という人生経験から身についてしまったものだと私は考えています。
「嘘をついた方がお得」という思考をリセットして「倫理観」(PR第一の柱)を
手に入れなければの他のPR的思考は手に入れられません。
「今日はどうしたの?」と聞いた次に「あなたはどうしたい?」と聞けば、
「自己修正」(PR第三の柱)のフェーズに入ります。
このとき、生徒が自分の力で解決できない様子であれば
「私(先生)はどうしたらいい?」とあくまでもコーチングの要素で、
生徒自身による言語化を促します。
もうお分かりだと思いますが、私は「遅刻しちゃダメ」とか
「何としてでも遅刻せずに学校に来なさい」とは絶対に言いません。
ぜひ指導の際に生かしてください。
*起立性調節障害など、自分の意思とは関係なく、登校が不安定になる生徒もいます。
そういうケースが疑われる場合は、保健室や校医と十分に相談してください。