Column コラム

求められる「リーダーシップとは?」(2)

2023.12.28

リーダーシップ経験が有効とされるためには,私は次の3つの要素があると,私は考えています。

❶コンプライアンスの意識

❷対等なコミュニケーションによる合意形成

❸最上位目標から最適手段を調整する

今回は,

❷対等なコミュニケーションによる合意形成です。

前回のコラムで私はこのように述べました。

>リーダーシップ経験が乏しい人がリーダーを務めると,突如として独裁者のように,自分勝手に振る舞う例が少なくありません。つまり,リーダーは立場上,他者の人権を制限したり,奪ったりする危険性に陥りやすいといういうことを,自らの経験を通して理解できている人こそがリーダーとして相応しいのです。

これはコミュニケーションや合意形成においても気をつけなければならないポイントです。

リーダーにふさわしいコミュニケーションは,合意形成リードすることです。

合意形成がうまくいっている例として,

医師と患者の「インフォームド・コンセント」が挙げられます。

日本看護協会によると,インフォームド・コンセントは以下のように定義づけられています。

インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。

公益社団法人日本看護協会ウェブサイトより)

医師は知識や経験があるからといって自己中心的に決定をリードを避けなければなりません。

同様に,あらゆるリーダーも自己中心的な決定を避けるべきです。

また,インフォームド・コンセントには,理解納得合意の3段階があるとされています。

リーダーが対話による合意形成をリードする際にも,この3段階を意識すると良いでしょう。

  • 理解

リーダーは相手の理解力に合わせて,専門用語を避け,わかりやすい言葉で説明しましょう。
このとき,相手が情報を十分に理解するために,

「ここまでの説明は大丈夫ですか?」など,説明を切り分けると良いでしょう。

このように,双方向性コミュニケーションは,

非対称でなく,対称的なものになるように気をつけましょう。

  • 納得

リーダーだからとって,独善的な決定する権利はありません。

リーダーは,策や案のメリット・デメリットについて情報を提供し,

また代替案も複数示した上で,

相手自身が納得して決定するプロセスをリードするべきです。

このとき,前回の❶でも示した通り,

リーダーには「誰かの人権を侵害していないか?」という倫理観が必要です。

多数決で少数派を納得させようとしたり,

立場を利用して論破したりするのは,

リーダーとして絶対に避けなくてはならない方法です

  • 合意

相手が情報を理解し,納得できたら最終的に合意ができます。

リーダーは,相手を上から目線で従わせようとするのではなく,

対等な立場であることを相手に理解してもらいながら合意に至るようリードするのが役目です。

教師と生徒,先輩と後輩など,立場上相手が対等性を感じにくい関係,

つまり,圧力や強制を感じやすい条件のときは,

リーダーは相手にそう感じさせないような工夫・演出が必要です。

◆◆◆◆◆◆◆◆

社会でリーダーシップが求められる背景には,

こうした対話による合意形成の経験が乏しい人が多い,という現実があるのでしょう。

学校では,先生や先輩が決めたことに生徒や後輩は従うだけ,

という上下関係・上位下達システムがよく見られます。

このシステムが残っている以上は,対話による合意形成力は育ちません。

教師や先輩は,生徒や後輩たちとの対話を通じて,,

理解納得合意のプロセスをリードすることが求められます。

ちなみに,この合意は再び対話によって変更したり,撤回したりすることも可能です。

「せっかく合意したのに変更できるの?」

と思うかもしれません。

もちろん,互いに合意を守ることは大切なのですが,

さらに良い案や策が生まれたり,

経済的に持続不可能な状態になってしまったりするなど,

当初の条件と現実が違ってきた場合は,

合意内容の変更を提案するのもリーダーの役割です。

つまり自己を修正することができます。

このあたりは次回の「❸最上位目標から最適手段を調整する」で詳しく説明したいと思います。