Column コラム
木野 雄介
- 私立中高講師
- 歴検日本史博士
卒業式排除問題
2023.03.30

「コーンロウ」と呼ばれる編み込みのヘアースタイルで県立高校の卒業式に臨んだ男子生徒が、卒業式から事実上「排除」されるという事件が起きました。
黒人文化にルーツ 編み込みのヘアスタイルは校則違反 「清潔と言えず」卒業式で隔離|FNNプライムオンライン(2023年3月28日 火曜 午後6:33)https://www.fnn.jp/articles/-/505829
以前私はこのコラム『校則は何のためにあるのか』でこう述べました。
かつては共存していく上で必要と考えられた、髪型を制限するルールは、時代や社会が変化し、多様な価値観が尊重される今日においては、その役割は果たせません。
それどころか、髪型の制限によって、学校に通いづらくなったり、学校から排除されたりしている子供がいるなど、学校が子供たちの人権を侵害しているという現実に気づくべきでしょう。
そして「他者と共存する上では、他者の価値観を不当に否定せず、尊重する」という考え方こそ、学校で学ぶべきことだと私は思います。
今回はまさに私が懸念した通りのことが起きてしまいました。
さまざまな意見が飛び交う中、
「校則に違反するのはよくない」
というコメントが散見されるのですが、ここで一つ確認しておきたいのはコーンロウは当該高校の校則に違反していないという点です。
現行の校則では、
「男子生徒は髪が耳にかかってはいけない」
というルールがあるそうです(このルール,当然私は否定派なのですが,今回は言及しません)。
ですが、「髪を編み込んではいけない」というルールは無いそうです。
つまりコーンロウにした生徒は、髪が耳にかかっていないので校則違反という指摘には当たらないのです。
その上で学校が「清潔とは言えない髪型」と、何の根拠もなく恣意的に、彼を卒業式から事実上排除した点に私は強い怒りを覚えます。
いとも簡単に人権を侵害したからです。
以前、私たちは、当研究所の研究員でもある栢之間倫太郎さん(新渡戸文化小学校教諭)とともに、学校におけるルール・メイキングについて掘り下げたことがあります。https://aki-jpri.peatix.com/view
ですが、学校でルール・メイキングが行われている現状はあまりありません。
以下のTV番組で、学校がルール・メイキングできない原因について、コメンテーターがこうおっしゃっていました。
(学校は)自分で考えない大人を産む教育を恣意的に運用してきた
その結果として生まれたのが「おまかせ民主主義」。
そこを変えていかないと社会は変わらない
校則は誰のためにある? ルールメイキングの重要性をZ&XY世代が議論(2023.03.22(水) 06:50)|TOKYO MX+ https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202303220650/
パブリック・リレーションズでは、こうした外部環境の変化を読み、修正が必要な場合の「自己修正」を柱の一つにしています。
もし先ほどの問題のあった学校が、パブリック・リレーションズの考え方とルール・メイキングの大切さを知っていたら、こんなことにはならなかったのではないかと思います。
ただし学校は、閉鎖的で外部環境の変化を察知しにくい環境・システムになっているという指摘もあります。
だとしたら教師は、より積極的・意識的に外部環境の変化を察知しなければならないと思いますし、
一方で管理職や教育委員会は、教師が、外部環境の変化を察知しやすい環境・システムというものを整えるべきだと思います。
パブリック・リレーションズを学び、誰1人取り残さない、人権を尊重し合う、ウェル・ビーイングな学校・社会を共に作っていきましょう。
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