Column コラム
山本 崇雄
- 横浜創英中学・高等学校副校長
- 教育系コンサルタント
スターバックスに学ぶ日本の校則の考え方〜髪の色と接客は関係ない〜
2021.11.29

スターバックスは今や生活の一部となっている人も多いのではないでしょうか?僕も原稿を書くのによく利用しています。どの店舗に行っても笑顔で接客してくれ、カスタマイズのメニューにも気軽に対応してくれるので、ついつい長居してしまいます。
こんな心地よい接客をしてくれるスターバックスですが、意外にも接客のマニュアルはないそうです。マニュアルの代わりにあるのが価値観の共有です。
最近ではコアバリュー経営と呼ばれる中核となる価値観を大切にしながら社員のマインドを整え、最上位の目標を達成するシステムを取り入れている会社をよく耳にします。
スターバックスもミッション&バリューズと呼ばれる共有する価値観があり、その中に『お互いに心から認め合い、誰もが自分の居場所と感じられるような文化をつくる』というものがあります。この価値観を共有して、自分の接客のあり方をそれぞれが決めていくのです。ですから「違っていても心地よい」場所が生まれているのでしょう。
このような自由な価値観のスターバックスでも従業員のドレスコードは存在していました。服装は白と黒に限定され、髪の毛の色も自由ではなかったようです。記事によると『米国では過去2回ほどドレスコードをより自由にする改定を実施しており、「日本でもやってほしい」という声が上がっていた。そこで、店長300人にヒアリングしたところほぼ賛成意見だった』といいます。
これを受け、スターバックスジャパンは2021年8月2日に従業員のドレスコードの改訂に踏み切ります。これまでは、ブラック・ホワイト・ベージュが基本色となっていましたが、新たにトップス・帽子・ボトムス・靴には、グレー・ネイビー・ブラウンが追加(ボトムス・靴はホワイトのみNG)。髪・ネクタイ・靴下には色の制限はなく、帽子もキャップ・ハンチング・ハット(ツバ5cm以内)が可能となり、より自由に自分自身を表現できるようになったのです。ただ一方的に改訂を決めたのではなく、店舗でトライアルを実施し、従業員とお客さま双方の意見を参考にしながら決めていく過程を経ており、パブリック・リレーションズの「双方向性コミュニケーション」を大切にしている点も見逃せません。
この改訂で、従業員は、新しい髪色や服の色、デニムや帽子を楽しみ、自分らしさを表現することで、より自然な笑顔や接客に繋がっているようです。さらには、「『こんな髪の色だから接客が良くない』と言われないように、1つひとつの行動を丁寧にしないといけないと思うようになった」という声も出ているといいます。
一方学校ではどうでしょうか?理不尽な校則の改訂などはようやく全国的に話題になり、動き出す学校も増えました。これからの未来を考えると、国籍や人種の壁が取り除かれた多様な社会が見えてきます。誰も取り残さない幸せな社会を考えると、服装や髪の色を規定することは全く意味のないことだとわかります。
しかしながら、髪の色と勉強は関係ないのにも関わらず多くの学校では髪の毛の色の規定はあります。どうして理不尽な校則などがなかなか無くならないのでしょうか。その理由の一つが、学校の中で、企業でいうコアバリューや目的の共有ができていないことにあると思います。学校の目標はOECDのラーニングフレームワークから引用すると「個人的にも社会的にも幸せになる教育」を行うことです。これはパブリック・リレーションズで言う「みんながハッピーであること」(倫理観)やSDGsの「誰も置き去りにしない」ことにつながります。その上で、付けさせたい資質・能力(コンピテンシー)を作成し、生徒の心理的安全性を高めるコアバリュー(マインド)を共有することが重要です。この土台を作ることなしに、校則の自由化などの表面的な改訂に取り組んでしまうとうまくいきません。
スターバックスの新しいドレスコードには、「人種、年齢、性別など、あらゆる違いを認め合い、お互いの自分らしさを尊重するために。」という思いが込められていると言います。この言葉には誰もが納得するのではないでしょうか。だとしたら、日本の学校もこの当たり前の思いを共有できるはずです。
今こそ、これからの社会を見据え、学校の最上位の目標を合意した上で、コアバリュー経営ができる学校が必要だと考えています。これができれば、校則の問題も自然に決まってくるのではないでしょうか。本当は生徒の学びを深める対話をしたいのに、服装や頭髪の注意をしなければならず、苦しい思いをしている先生が今の日本にはたくさんいるでしょう。そんな皆さんの職場や学校でも、目標やコアバリューを対話することから始めませんか?よろしければ、Public Relations for School がお手伝いいたします。
参考記事
スターバックスがドレスコードを新しくしたその裏側を担当者に聞いた(PREDGE)
スタバが従業員の金髪や帽子をOKに やって分かった意外な効果(日経クロストレンド)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00523/00002/?i_cid=nbpnxr_index
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