Column コラム
山本 崇雄
- 横浜創英中学・高等学校副校長
- 教育系コンサルタント
誰もが幸せに暮らせる世界へ〜ウィシュマさんの問題を通して
2021.09.01

『みんながハッピーであること』
これはPublic Relations for Schoolで一番大切なキーワードです。この観点で今の日本を俯瞰した時、皆さんはどのようなことを感じますか?この観点で僕が最近一番心を痛めたニュースが、名古屋入管に収容中死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの問題です。
そこで今回は、ウィシュマさんの問題をパブリック・リレーションズの観点で見ていきたいと思います。
Public Relations for Schoolで考えるパブリック・リレーションズはとは、「個人や組織体が最短距離で目標や目的に達する、『倫理観』に支えられた『双方向性コミュニケーション』と『自己修正』をベースとしたリレーションズ活動である」(井之上喬)という定義が元になっています。とりわけ重要なのは『倫理観』、つまりPublic Relations for Schoolでいう『みんながハッピーであること』が全ての土台になっているという点です。
これまでの報道を見る限り、ウィシュマさんの問題は誰も幸せにしません。報道ではこの問題のごく一部しか伝えられていませんが、遺族にのみ開示された監視カメラの映像の全容についてフジテレビ解説委員の鈴木款さんが渾身のレポートを書いてくださっています。
【独自】「“鼻から牛乳”は日本のジョークです」ウィシュマさん映像の全容判明
この記事によると、ウィシュマさんがカフェオレを吹き出し、それを「鼻から牛乳や」と言って笑った入管庁の職員は「これは日本のジョークです。ウィシュマさんと仲良くするための」と遺族らに説明したといいます。このことは、ウィシュマさんに対する人権侵害だけでなく、これを「日本のジョーク」と世界に発信しているという点で僕ら日本人全員の人権感覚が問われていると自覚しなければなりません。
この返答だけでなく、遺族の代理人の弁護士団が、収容中の状況をさらに詳しく調べるために行った行政文書の開示請求に対する名古屋入管から送られてきたほぼ黒塗りの約1万5千枚の文書を見ても、入管施設が遺族との対等な『双方向性コミュニケーション』ができているとは言えません。
その結果、当然、誤った行為を受け入れ、謝罪するという『自己修正』に至っていないわけです。鈴木さんは「国連も問題視する非人道的な入管制度が抜本から変わらぬ限り、日本という国に未来はこない。まずはウィシュマさんのすべての映像を公開し、国民1人1人が入管施設の現実を直視したうえで議論を始めるべきだ。映像の公開が無い限り、政府は人権を軽視し国民から真実を隠そうとしていると言わざるを得ない。」とレポートを締め括っています。
この問題を受け、僕ら教育に携わるものができることは何でしょうか。まず、問題を子どもたちに投げかける中で、倫理観がベースとなっているパブリック・リレーションズの3つの視点を与え、日々の学校生活にも落とし込んでいくことが必要です。「鼻から牛乳」は、中学生に聞いても知っているフレーズです。ただ、彼らは人を傷つけるためにそれを使うべきでないと知っています。この感覚を大切に育てるためにも、集団の同調圧力の中でも、自己を俯瞰的に捉え、自律的な行動をする指針としてのパブリック・リレーションズの概念を教育に取り入れていくことの重要性を感じます。
リアル社会での関係構築活動であるパブリック・リレーションズが、漫画を通して中高生にわかりやすく伝えられているPublic Relations for Schoolのテキストを、この機会にぜひ手に取っていただきたいです。
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