Column コラム
山藤 旅聞
- 新渡戸文化中学校・高等学校副校長
- (一社)旅する学校代表理事
「大丈夫?」はNGワード!?
2022.02.01

みなさん、こんにちは。山藤旅聞です。
コロナ感染が拡大し、新たな局面を迎えていますね。みなさんや、みなさんの大切な方々のご健康はいかがでしょうか。学校では、生徒やその保護者、そして大切な同僚のみなさんの中にも、コロナ感染に苦しんでいる方々が増えてきました。1日も早い回復を祈るばかりです。
さて、今年1本目のコラムは、僕が生徒によく使ってしまう「大丈夫?」という声かけについて、パブリック・リレーションズ(PR)の視点で考えてみたいと思います。きっかけは、朝のジョギングでした。僕は、週に2・3回、早朝にジョギングをしているのですが、先日、思いっきり転倒して怪我をしてしまいました。その際、声をかけてくださった方の「ことば」から学ばせていただいたことがきっかけとなりました。
いつものように、川沿いのランニングコースを走っていたのですが、工事中のために、コースの一部が仮設のコースに曲がるために、一部、直角に曲がるコーナーができていました。このコーナーに差し掛かるときに、すでにコーナーの先からこちらに走ってきている人の気配があったので、僕は、ぶつからないようにコースの右端に移動しようとして、仮設のコースの凹凸に足をひっかけ、大きく転倒してしまいました。
さて、ここで問題です。
逆方向から走ってきたのがみなさんで、目の前で大人が転倒しました。さぁ、みなさんなら、どのような行動をとるでしょうか?以下の選択肢を参考にお考えください。
①気にはなるけど、自分も走っているので素通り
②「大丈夫?」と声を掛けて様子を探る
③上記以外の行動や、声をかける
みなさんならいかがでしょうか。
実際に僕がその立場だったら、②だったかなぁーと思います。
さて、今回のお話では、どうだったかといいますと、③でした。実際には、このように声をかけてくださいました。
「ごめんごめん。私が視界に急に入ったからだよね。申し訳ない!!!」といいながら、近寄ってきてくれました。
僕は、心の中で、「えーっ。僕が勝手につまずいたのに、ごめんごめんって、言ってくれるんだぁー」と思いながら、「とんでもないです!!!自分で勝手につまずいてしまっただけです。ごめんなさい!!!」と答えると、
「いやいや、こっちが急に現れたからでしょ。ごめんごめん。痛いところはある?怪我はしていない?本当にごめんね!!!」と何度も謝りながら、僕のことを心配してくださいました。すごく安心した自分は、冷静に自分の体の痛みがあるところを確認しながら、「ひじとひざと背中を打ったようです。幸い、頭は打っていません。続けて走れそうです」と答えると、
「ひざは怪我しているけれど、背中は血は出ていなそうだよ。」と、自分では見ることができない背中をみてくれました。結果、ひざからは血が出ていましたが、あとは少し背中とひじを地面に打っただけで、外傷はひざだけだと分かり、何度も、お礼を伝えて、安心して別れることができました。
その後、ひざを擦りむいてしまったところが少しだけ痛みましたが、気持ちよさが勝り、ジョギングを完走することができました。
ここで、この方の話しかけ方を、パブリック・リレーションズの考えで振り返ってみます。
目の前で転んだ人がいて、「大丈夫?」と声をかければ、大丈夫な人から、大丈夫でない人に声をかけるために、この両者の関係は「対等」ではなく、上下関係が生じている場合があります。大丈夫でない人は、「大丈夫です」と条件反射的に答えて、この場はすぐに終わってしまいそうです。一方で、今回のように、「ごめん。こちらが悪かった」ということばをかけた場合はどうでしょう。これは両者の関係が「対等」に近づいています。このおかげで、自分も先方に甘え、怪我の場所を一緒に確認してもらったり、会話が発生しました。パブリック・リレーションズの考えでは、双方向性コミュニケーション(対等に会話を重ねる)に該当すると思います。(もちろん「大丈夫ですか?」と丁寧に声をかけた場合や、状況によっては、「大丈夫?」という声かけも後者と同様な感じにもなります。)
このことを先生と生徒との会話に置き換えるとどうでしょうか。
授業中に集中していない生徒がいたとします。「大丈夫?」と声かけると、「大丈夫です。」とか、「シーン」と返事をしてくれない反応が想定されます。
でも、「ごめんね、課題が難しかったかな?」とか、「申し訳ない。今日の課題はつまらないよね?」と声をかけたらどうでしょうか。生徒と先生の関係の対等性を気にかけた声かけにより、生徒は今の状態を素直に語ってくれそうな気がします。授業をしている先生と生徒というだけで、すでに対等ではない関係性になっているので、授業に集中できていない生徒への声かけには、対等性を大切にして、生徒の立場に近づけるような「ことば」を僕らが準備しておけば、対話が発生し、その場で生徒が自分をコントロールする行動に変容を促すことが出来る可能性が高まると思うのです。結果、双方がハッピーになりますね。
みなさんも、「大丈夫?」ということばを、考え直してみませんか?
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