Column コラム

IDGsとパブリック・リレーションズ

2023.08.18

 2023年の夏は、120年間の日本の観測史上で最も平均気温が高かったことが気象庁から発表されました。確かに、危険性を感じる暑さを実感しています。みなさん、この夏はいかがお過ごしでしょうか。

 さて、今回は、IDGs (Inner Dvelopment Goals インナー・ディベロップメント・ゴールズ、内面の成長目標) についてご紹介します。

 SDGsが周知・推進されてきた中、それでも多くの国々において各年度の目標達成状況が芳しくないという現状があります。日本国内でもSDGsの認知度は高まっていますが、具体的な行動が少なかったり、取り組みが表面的なものであったり、宣伝的な役割を果たしてしまっているなどの批判も多くあります。そんな中、取り組みを実行する上で必要な能力やマインドをもつ人が不足していることが大きく影響している、との考えから、「内面の成長」の必要性が議論され始めました。そうして生まれたのが、持続可能な社会を目指す私たちに必要とされる能力やマインドについて改めて整理され提案された IDGs (Inner Dvelopment Goals インナー・ディベロップメント・ゴールズ、内面の成長目標)と、それを推進する動きです。(詳細はQRコード参照)


 IDGsは、具体的には以下のような5つのカテゴリと23のサブカテゴリで構成されています。

 ①自分のあり方-自己との関係性
  1) 内なるコンパス
  2) 誠実・真摯で、本物である
  3) オープンさを学ぼうとする意欲・姿勢
  4) 自分を理解する力
  5) プレゼンス(今ここにあること)

 ②考える-認知スキル
  6) クリティカル・シンキング(思考の偏りに気づく)
  7) 複雑さへの認識
  8) パースペクティブ・スキル(視点・見通す力)
  9) 意味を見出す力
  10) 長期志向とビジョニング

 ③つながりを意識する-他者や世界を思いやる
  11) 感謝
  12) つながっているという感覚
  13) 謙虚さ
  14) 共感と思いやり

 ④協働する-社会的スキル
  15) コミュニケーション・スキル
  16) 共創スキル
  17) インクルーシブ・マインドセットと異文化コンピテンス
  18) 信頼
  19) 集団を動かすスキル

 ⑤行動する-変化を推進する
  20) 勇気
  21) 創造性
  22) 楽観性
  23) 粘り強さ

 気になるカテゴリやサブカテゴリはありますか?
 このIDGsは、2022年に国連でも承認され、成人発達理論の提唱者、心理的安全性の研究者、システム思考を含む学習する組織の提唱者などによって推進されています。この研究者たちの中には、SDGsの17の目標や169のターゲットの作成、また、ロゴデザインの考案などにも関わったメンバーが含まれています。そして、IDGsはSDGsの達成のためだけに使われる目標ではなく、これからの時代、より広く普遍的に使われ続けるものでありたいと提案者たちは考えています。

 「内面の成長・発達」というと、自己啓発セミナーのようなものをイメージする人が多いかもしれません。でも、ここで言う「内面の成長・発達」とは、大人の内面的な成長を研究する学術分野「成人発達理論」の観点から、いわゆる「人としての『器』の大きさや心の成熟」のことを指します。発達を遂げると、自分が信じる価値観だけで良し悪しを決める世界観から、他者にとってはどうなのかと相手の目線で物事を見ることができるようになります。IDGsは、SDGs達成のために必要不可欠な駆動力として議論され始めたものではありますが、他者と繋がりながら社会の中で生きていく私たち全員にとって、ごく一般的にそして普遍的に必要なものだと言えるのではないでしょうか。

 IDGsの観点は、倫理観を基盤として対等なコミニケーションのもと、自己修正を重ねるパブリック・リレーションズの考えとも親和性が高いと言えそうです。IDGSのカテゴリやサブカテゴリをパブリック・リレーションズの理念と重ね合わせながら自分を省みてみること、そして自己修正を繰り返しながら発達を目指すことで社会をより良いものにしていく力にしていきませんか?