Column コラム

行動力とパブリック・リレーションズ(PR)

2023.06.12

 みなさん、ご無沙汰しております。マスク着用の義務が個人の判断に任される新しい学校生活が始まって2カ月がすぎました。学校行事も大型連休でも、人の動きは活発化しているようです。みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

 さて、日本人の行動力の低さが露呈する調査結果が公開されました。それは、2022年6月にボストンコンサルティンググループが発表した「サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果(日本/グローバル比較・16 〜 69歳、1,000 人を対象)によるもので、「 気候変動問題に取り組むために あなたが行動を変えようとする時、最も大きな障害となることは何ですか」というアンケート調査に対して、「自分が何ができるのか、実のところよくわからないこと」という回答が42%で、他国と比較すると圧倒的に高い割合でした。

 https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2023/understanding-a-sustainable-society

 この結果は、何を意味するのでしょうか。答えのない問いや、将来世代に影響する未来に ついて、「よくわからない」と回答する大人の割合が多い状況は、悲しい現実です。逆に、 どうすれば、行動を喚起することができるのでしょうか。良い行動、悪い行動という二者択一の選択肢があると思い込み、明快な答えがないと行動してはいけないと多くの人が思い込んでしまっているのではないでしょうか。これは小中高等学校の学校教育と関係しているのではないでしょうか。今までの教育が影響しているとするならば、教育の何を変えていけばいいのかを、考えるきっかけともなりました。

 学校では、唯一解を良しとする課題や、例年通りの行事活動が蔓延しているかもしれません。コロナが開けて、コロナ前に「戻る」という表現に、違和感も感じます。ただ単純に元に戻すのではなく、教育活動の1つ1つを、教育目標や、最上位目標と照らし合わせながら、修正し、新しい学校文化を構築する大切な1年になりそうです。パブリック・リレーションズ(PR)の考えとしては教育目標(倫理観がベース)に照らし合わせながら、先生同士や、生徒たち、さらには保護者との双方向なコミュニケーションを重ね、教育活動の自己修正を重ねていく活動と重なります。

 これらの活動は、先生方も、生徒たちも、答えのない問いを考える時間を増やし、目標や目的意識をしっかり持ち、対話によって、ある行動を見出す過程を共有する機会を増やしていくことになると思います。時には、コロナ前の当たり前に、数年前の資料を読み解きながら、必死に戻していくことよりも、大人(教員)は助言を控えて、生徒たちが自己修正を繰り返しながら、調整する余白や余裕、さらには寛容さを大切にする学校文化をつくっていくチャンスにもなりそうです。

 世界の課題は常に唯一解ではなく、様々な解答があるのが現実です。「 答え」を 待ってから行動するのではなく、不完全でも行動しながら、自己修正を重ね、様々な人たちとパートナーシップを組みながら、行動してみることを中高生時代に経験することは、予測不可能時代を生きる 生徒にとって大切な経験になると思いますし、冒頭の残念なアンケート結果の解決方法の1つになるとも思います。

 これからの時代を担う若者に固定概念を提示する 大人ではなく、若者の行動を寛容に見守り、包括し、そして時には、対等なパートナーシップを持って、共に自己修正を繰り返しながら、行動する大人の伴走が今後の教育には重要になると感じたアンケート結果でした。日本の大人の行動力の向上に向けて、教育でできることは何かを、引き続き考えていきたいと思います。