Column コラム
木野 雄介
- 私立中高講師
- 歴検日本史博士
教師・上司のためのコミュニケーション論⑤~プレゼンもコミュニケーション~
2021.08.26

教師と生徒にまつわるコミュニケーションについてシリーズでお話しています。
上司と部下の関係に読み替えても使える部分が大いにあると思いますので、教師以外の方もぜひお読みになってください。
前回のコラムでは、教師から生徒や保護者向けの「プリント」によるコミュニケーション方法について3つのコツをお伝えしました。2学期からぜひ参考になさってください!
さて、「探究」の授業がスタートし、生徒たちが探究の成果をプレゼンテーション(以下、プレゼン)する機会も増えたのではないでしょうか。多くの先生方は、ご自身が教職課程をとる中で、生徒にプレゼンの指導することを想定していなかったと思います。少なくとも私はそうでした。
しかし、以前勤めていた学校では、生徒全員が文化祭でプレゼンをする、というのが恒例となっており、その指導を担当するのはクラス担任の役割、と暗黙で決まっていました。そんな指導をしたことがない私はいろいろな本でプレゼンについて研究をすることにしました。
当初の私はつい、本で学んだプレゼンの技法ばかりを教えていました。有り体に言えば、それは単なる「プレゼンがうまく見えるコツ」でした。しかし、プレゼンの最も大切なことは、技法よりもその中身であり、また、それを「聴衆に届けたい!」というプレゼンターの情熱であり、「どれだけ聴衆のことを考えてプレゼンできているか」ということでもあります。
具体的には、相手の年齢や社会的立場を想像するよう伝えました。聴衆は自分たちより年下の小学生か、同じくらいの中高生なのか、両親世代なのか、祖父母世代なのか。そうすると、分かりにくい専門用語が用いられていないか? そのプレゼンは最後まで聞きたい、と思わせるストーリーになっているだろうか? など、聴衆の気持ちになって考えることができるようになります。この考え方はパブリック・リレーションズ(以下、PR)の「双方向性コミュニケーション」と一致する部分だと思います。
こういったことを突き詰めて考えていく上で最も大切なのは、「なぜプレゼンしたいのか」「なぜ聴衆にこれを聞いてもらいたいのか」というモチベーション(動機)です。
ここが崩れてしまったら、文化祭当日までモチベーションを保つのは非常に困難です。正直言って、「プレゼンは、先生がやれと言うからやる」というモチベーションになってしまう生徒はたくさんいました。ですから、この部分で妥協せず、生徒自身の言葉で納得解が出るまで、私は何度も何度も問い続ける必要があると思います。この部分は最上位目標、つまりPRの「倫理観」に該当します。絶対に伝えたいんだ!というモチベーションを手に入れた生徒は、途中の困難もなんとか周りの助けを借りながらも自律的にGOALへ向かっていけるでしょう。
例えば、プレゼンのテーマが「犬の保護施設について」だったとします。その生徒の動機は、「聴衆に、犬の殺処分の現実を知ってもらい、日本から犬の殺処分を無くしたい」でした。
そうしたら、その動機を満たすために必要なデータや資料を集めてプレゼンを作成します。このときに、私がよく生徒たちに言っていたのは、「聴衆の、心だけなく行動まで変えられるのが最高のプレゼンだよ」ということです。
先ほどの例で挙げた生徒は、犬の殺処分が少ない国の精度や、先進的な取り組みを紹介しようとしていました。しかし、「聴衆の行動まで変える」を目的にすると、ペットショップよりも保護施設から貰い受けましょうとか、去勢・避妊手術のための基金に募金しましょう、といった、犬の殺処分を無くすための行動を聴衆に促すプレゼンにすることができました。
このとき初めて、生徒たちは、聴衆の心を動かすような「スライドのデザイン」や「話し方や身動きの仕方」といったプレゼンの技法を学びたくなるのです。当初の私が犯したミスのように、プレゼンがうまく見えるコツを先に教えてしまうと、生徒たちはコツや形式にこだわるようになり、中身の全くない「プレゼン劇」になってしまいます。なので、「なぜプレゼンしたいのか」「なぜ聴衆のこれを聞いてもらいたいのか」というモチベーション(動機)を言語化する作業は非常に大切です。
プレゼンの神様と呼ばれている株式会社圓窓代表の澤円氏は次のように述べています。
「プレゼンは“プレゼント”。伝える相手に贈り物をするような気持ちでプレゼンテーションをするのが大切。相手の行動を変えられるほどの贈り物となれば、それは素晴らしいプレゼンなのだと思います。」
先生方、ぜひ澤さんの言葉、参考になさってください!
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