Column コラム
木野 雄介
- 私立中高講師
- 歴検日本史博士
教師・上司のためのコミュニケーション論①〜尊重する〜
2021.04.21

みなさん、こんにちは。
今日から、教師と生徒にまつわるコミュニケーションについて数回に渡ってシリーズでお話しします。上司と部下の関係に読み替えても使える部分が大いにあると思いますので、教師以外の方もぜひお読みになってください。
4月になり、多くの学校・組織では新年度を迎えたことと思います。
私はこの4月が大好きです。担当する学年・クラスが変わったり、職員室の座席が変わったりするこのリフレッシュ感が、教員の醍醐味の一つだと思います。
「よーし、新しい学年・クラスで心機一転、がんばるぞ!」と、意気込むのは生徒たちも同じだと思います。そんな生徒たちの最大関心事の一つに「担任は誰か」があります。
2月くらいになると生徒間でいろんな噂が飛び交います。毎年のように「来年は先生ですか?(=木野が担任するのか?)」と聞かれていました。
生徒たちに「また担任してもらいたい」と思われるのは悪い気持ちはしませんが、なぜ私がいいのでしょうか?
人間には、自分を守りたいという本能があります。現状を変えるということは、変化による失敗のリスクが伴います。よって、人間は無意識のうちに「変化を起こさない理由」を探してしまうのです。これを現状維持バイアスといいます。これにより、生徒たちは、慣れている現担任の方が低リスクだと判断しているのです。つまり、「他の先生はリスクがある」というリスク回避をしているわけです。
そこで、他の先生だとなぜ嫌なのか(=どんなリスクがあるか)、具体的に聞いてみたことがあります。すると、「規則に厳しい」、「怖い」、「うるさい子を注意してくれない」、「頼りがいがない」「お説教が長い」などといった回答が得られました。中には偏見や誤った伝聞情報もあり、「そんなことないよ」と私からやんわり否定することもありますが、これらを総合すると、生徒たちには「自分らしく振る舞えないのが嫌だ」という思いがあるのだと感じました。つまり、生徒は自分らしくありたいのに、教師が「邪魔」しているかもしれないのです。
ではどうすれば良いのでしょうか?
生徒一人一人が自分らしく振る舞えるために「生徒同士、お互い尊重し合いましょう」という指導をしている先生は多いと思いますが、私が言いたいのは「教師も生徒を尊重しましょう」ということです。尊重するためには、まず、教師と生徒がフラットな関係性が必要です。このとき、「生徒は教師を尊敬すべきだ」などと思っているのだしたら、フラットな関係性は成立しません。ただでさえ、年齢も立場も違うのですから、生徒に尊敬を強要するのではなく、こちらから生徒を尊重する所がスタート地点です。
※「尊敬」ではなく、あえて「尊重」としています。「尊敬」は、上下関係から生ぜざるを得ない外発的なイメージがあるので、私は避けています。
そのためには、生徒の思いや考え方、どんな学校生活を送りたいのか、どんな成長をしたいのか、なぜそういう思いに至ったのか、などを双方向性コミュニケーションで共有する必要があります。仮にそういった思いを無視して、「生徒なんだから教師の言うことを聞け」という一方的なコミュニケーションは、生徒を尊重した態度ではありません。
「邪魔してるつもりはない。」と思う先生もいらっしゃるかもしれませんが、生徒からしたら「それは邪魔」と思われている可能性があるわけです。悪意がなかったとしても、双方にとって良い状態ではありません。子供たちの成長を助ける教師として、それを「邪魔する先生」だと思われるのは、ある意味、最悪です。「生徒の邪魔していないかな?」という部分に自分の言動をフォーカスしてみてください。
「邪魔をしない」というのは、「無関心になればよい」という意味ではありません。尊重をベースとしていますから、むしろ無関心とは正反対で、どんどん「関心」を持つ必要があります。
次回のコラムではこの「関心」について書きたいと思います。
なお、怖い先生による独裁は、一見するとクラスがまとまっているように見えるし、授業も静かで良い学習環境が整備されているように見えるかもしれません。しかし、生徒たちの目的は「怒られないこと」であって、「先生の言うことをちゃんと理解し、自分の成長につながる行動をとろう」ではありません。担任が変われば元に戻る可能性もありますし、先生の真似をして「脅せば人は動く」という誤ったコミュニケーション術を身につけてしまう可能性もあります。唯一、命の危険が迫るような行動の場合には、怖い先生を演じる必要性もあります。あくまでも演じるなので、演技が上手な先生にお任せすればいいと思います。
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