Column コラム
木野 雄介
- 私立中高講師
- 歴検日本史博士
ミャンマー旅行〜Mとの出会い〜
2021.03.26

私は、10年ほど前にミャンマーに旅行したことがあります。

ヤンゴン国際空港にて。たくさんの出迎え客が空港の外で待っている。
当時のミャンマーは軍事政権国家で、入国するためには、観光であっても事前にミャンマー大使館へ行き、ビザを取得する必要がありました。大使館で事前に観光ビザを取得してからの旅は、私にとって初めての経験でした。
ミャンマーの空港には、今か今かとそれぞれの大切な人たちを待ち受けているたくさんのミャンマー人が待っていました。まるで有名人の出待ちのような光景でした。
私はそんなミャンマー人たちを横目に見ながら、街までの移動手段を思案していたところ、1人のミャンマー人が私に声をかけてきたのです。
旅行好きな方ならよく遭うシーンだと思います。
「良いレートで両替してあげるよ」「こっちのタクシーが安いよ」など甘い言葉をかけてくるのですが、大抵の場合は要注意です。詐欺の可能性が高いからです。
私もよく旅行するのでこういったのは慣れっこだったのですが、今回はすこし様子が違いました。
声かけてくれた若い男性のMは、とても流暢な日本語を話していたのです。

彼は写真に映るのをとても恥ずかしがっていた。
Mは「日本語を勉強したいから、あなたのガイドをやりたい」と言うので、
Mの紹介してくれた乗り合いバスに乗って、とりあえず街を目指すことにしました。
東南アジアの1人旅に慣れていた僕は、
「胡散臭いな。どこかで金を要求してくるに違いない」と思っていました。
僕の1人旅は大抵がノープランで、現地に着いてからどんな旅行にしたいのか考えるのです。
そのことをMに告げると、Mは街の喫茶店へ僕を連れていってくれて、そこでたくさんのオススメ観光地を教えてくれました。
話が一段落し、ゲストハウスのチェックイン時間が近づいてきました。
色々教えてくれたし、ここは僕が奢ってMとは別れよう、と思ったら、なんとMは僕の分の支払いまで済ませてくれていたのです。
「これは手懐けておいて後で何か大きな要求をしてくるタイプか?」と警戒していた矢先、
「良い両替屋を紹介してあげる」、と言うんで、
「お!来たな!?」と思い、興味本位でMに着いていくことにしました。
街の細い裏路地を右へ左へとMについていくと、
そこは本当にレートの良い両替屋だったんです。
もう僕には訳が分かりません。
僕はMのことや国のことををもっと知りたいと思い、夕飯を一緒に食べる約束をして、一旦別れました。
そして夕飯のとき。
Mとたくさん話をしました。
Mのこと、家族のこと、国のこと・・・
そこでMは言ったのです。
「今、ミャンマーは閉ざされた国だが、いつか必ず開かれる日が来る。そのときのために外国語を学んでいるんです。僕が聴講している日本語のクラスは、常に数百人が参加しているから、教室は常にパンパンどころか、立ち見までいますよ。ミャンマーに日本人が来ることなんてとても珍しいんです。だから是非ガイドをさせてください。」と。
この旅行中、Mとはたくさんの話をしました。
そこには軍事政権への恨みなど全くありません。
Mは家族の幸せを願い、国を愛し、常に未来のこと思う倫理観にあふれた立派な青年だったのです。

裸足じゃないと入ることができないほど神聖なお寺
僕はそれから毎日Mと過ごしました。
僕が200キロくらい離れた寺院まで行って一泊した次の日も、帰りを待っててくれました。
別れの日、空港へ向かうバス(というかトラックの荷台)の中、
僕は「これは本当に御礼だから受け取ってほしい」とMにチップを渡しました。すると、
「本当に要らないんだ。そのかわり、木野さんの国で『ミャンマーはすごく良い国だよ』ってみんなに言ってください」
と言われ、思わず涙を流し、僕たちは抱き合いました。
帰国後もMに連絡を取りたいので、メールアドレスを手帳に書いてもらいました。
後で見てみるとそのメールアドレスは読み取り不能なほど震えた文字でした。

これが空港行きのバス。ここで私達は泣いた。
トラックの中だったからか、Mも泣いていたからなのか、アルファベットが苦手なのか・・・
真相は定かではありませんが、今ではとても良い思い出です。
旅は本当にいろいろな学びがありますが、この旅ほど僕の印象に残った旅はありません。Mが僕に話しかけてくれなければこのような学びはありませんでした。コミュニケーションの始まりには多少の勇気が必要かもしれません。読者の皆さんにも勇気をもってコミュニケーションを始めてほしいと思います。
いまミャンマーは軍部のクーデターによって再び混沌とした状態に戻ってしまいました。
Mが無事でいるといいな。
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